皆さんは営業について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
私はKDDIの商材を扱う営業会社に入社した時、友人からこのように言われました。
営業って、渋っているお客を強引に説得して、買いたくないものでも買わせる仕事でしょ?
当時は私も反発しましたが、冷静に考えると、おそらくこういった見解は友人だけではなく、大半の人間が思っていることだと思います。
社会的に押し売りの印象が植え付けられているので、無理もありません。
仮に強引な営業をしているなら、その営業マンはダメな営業マンであり、近い将来、会社は姿を消すでしょう。
実際に、知り合いの営業会社は、ここ数年間でいくつも無くなりました。
理由として、やはり「強引に説得して、買いたくないものを買わせる」営業を行っていたことが挙げられます。
お客様を思いやらない「押し売り」は、言語道断です。
では、営業とはどのような仕事なのでしょうか?
今回の記事では、A I時代に通用する普遍的な営業のあり方について解説します。
お客様から信頼される存在であり、意思決定をサポートすることが営業
営業は商品説明をして、購入を促すだけの存在ではありません。
マニュアルのようなことは、これからはAIがやってくれるでしょう。
つまり、AIがやれない部分があります。
例えば、現在はネットを中心に、お客様自身で情報を仕入れることができます。
しかし、その情報量の多さに時折、決断を迷う時もあるでしょう。
そんな中、「誰かに頼りたい」と思った時に、真っ先に声がかかる存在が営業マンであるべきなのです。
その上、購入を迷っているお客様に対して「〇〇さんの場合、Bの商品が一番合っていると思いますよ」といった的確なアドバイスを提供できる人でなければならないと考えます。
つまり、意思決定をサポートできる人が信頼され、営業として長く生き残ることができるのです。
そして、声がかかり続けるためには、まず自社・他社商品を詳しく知っておく必要があります。
また、知識だけではなくプロとして自覚を持ち、客観的な意見を持つことも必要です。
自社商品の説明だけしてしまうと、どうしても売りたい気持ちの押しつけになってしまいます。
しかし、売る商品全般や業界のことを広く客観的に話せると、「この営業マンなら信頼できるかも」と思ってもらいやすいでしょう。
誤解を恐れずに言えば、「自分から買ってもらわなくてもいい」と思える心も重要なのです。
1人のずさんな営業が、ブランドを一瞬で破壊する
お客様は、目の前の営業マンを、会社の代表者として判断します。
販売代理店となると、商品卸元のキャリアの看板を背負いますので、お客様はその「キャリアの顔」として見ます。
新人・ベテランは一切関係ありません。
私自身の経験ですが、営業3年目で、大手の通信関係の商材を販売していた時の出来事です。
営業に慣れてきたのものあり、お客様と話すのも最初の頃より、苦では無くなっていました。
しかし、ある月に会社全体の営業成績が過去数か月で最も悪く、挽回するために朝から晩まで動き回っていたことがありました。
そして月末に差し掛かろうとした時です。
あるお客様の家に訪問し、導入のメリットも大きい、販売する上で好条件なお客様でしたが契約に至らず、検討で終わってしまいました。
数字に追われていて、お客様の気持ちを汲みきれずに、やや強引な営業になっていたのです。
しかし、私はやりきれずに「メリットばかりなのに、お客様の考えは間違っていますよ!」と捨て台詞を履いてしまいました。
このことにお客様は気分を害し、大手通信会社に私へのクレームの連絡が行ってしまったのです。
しかも、私へのクレームだけならまだ良かったのですが、お客様は他のグループ商品も解約されてしまいました。
会社のイメージを毀損してしまうことで、親会社のイメージをも崩してしまい、グループ会社にも影響を与えてしまったため、大きな問題となってしまったのです。
その後、会社全体に周知され、営業の改善が徹底されました。
苦い体験でしたが、お客様の信頼を損なう営業だったと本当に反省させられました。
結局、お客様は営業マンを通して、その商材の提供会社を見ています。
販売店でも下請けであったとしても、お客様は対応した人を、その会社の代表として判断するため、一人ひとりが責任と自覚を持つことは必須なのです。
信頼を勝ち取る力と、確かな営業スキルを磨こう
近江商人の経営哲学のひとつとして「三方よし」が広く知られています。
商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえるという考え方です。
実は今も昔もこれからも変わらない「営業の本質」ではないかと思います。
営業を続けると、売る方も良かった、買う方も良かった、社会も経済が回って良かったとなるような心構えは必要です。
現在、営業職はガイドラインやコンプライアンス等の制約が多くあり、困難な状況にぶつかることも多々あります。
しかし、営業は信頼を勝ち取り、意思決定をサポートする仕事であることをしっかりと持って臨めば、問題も起こらず、心から喜ばれる売れる営業になるのです。
営業職に就いている人間は、年数に限らず謙虚な姿勢で、会社の顔だという自覚を持ち、営業スキルを日々磨くことが肝要だと思います。