「優秀な営業職を採用したいが、離職によって教育費用が回収できなくなる点が不安だ」
「過去の代行は成果が不透明だったが、自社に知見を蓄積できる体制を整えたい」
このような悩みを持つ責任者には、営業代行という選択肢があります。
本記事では、営業代行とは何かを簡単に解説し、選定基準や確認すべき項目などを紹介します。
営業代行とは、採用1,000万円規模のリスクを「事業成長」へ転換する戦略投資である
営業代行とは、企業の営業活動の一部または全般を、外部の専門企業やフリーランスに委託するサービスです。
優秀な営業職を1名採用して戦力化するまでには、以下の通りに約1,000万円規模の費用がかかるといわれています。
| 項目 | 内容・算出根拠 | 概算金額 |
|---|---|---|
| 採用コスト | 人材紹介サービス経由で年収600万円~800万円を人材を採用した場合の紹介手数料を35%と仮定 | 約210万〜280万円 |
| 戦力化までの人件費 | 1人あたりの月次人件費50万円~60万円×立ち上がり期間半年で算出 | 約300万〜360万円 |
| 指導者の機会損失コスト | 指導者が新人教育に当てる費用を1時間5,000円、月20時間と想定。半年で120時間分を指導者が営業活動が行えないことによる機会損失を100万円~150万円と仮定 | 約150万〜200万円 |
| AIツール運用費 | 営業AIを運用している場合のランニングコスト(月10万〜15万円程度) | 約60万〜90万円 |
| 研修インフラ・教材整備費 | 商談資料をデータへ統合する工数、社内の教育コンテンツ用動画・テキスト等の整備など | 約40万〜60万円 |
| 合計 | 約760万円~990万円 |
営業担当を独り立ちさせるためには、概算ですが1,000万円規模の予算がかかります。しかし、採用した新人が早期に離職した場合、新人教育に投資した金額が回収不可能になる恐れがあります。
営業代行に業務を委託することは、この1,000万円規模の投資費用の回収が不能になるリスクを負わないための、ひとつの投資戦略といえるでしょう。
AIと人間が共創する「ハイブリッド営業」
昨今の営業活動には、大量の連絡や素早い応答は人工知能が担い、信頼の構築は人間が担当する、ハイブリッド営業の考え方が出てきています。
膨大な情報の処理や活動速度が求められる業務は、AIが得意とする領域です。AIによる自動応答を導入すれば、24時間365日応答可能になり、顧客が競合他社に流れてしまうリスクを最小化できます。
対照的に、相手の情緒を汲み取った対面での交渉や合意形成は、AIよりも顧客に寄り添える人間が担うべき役割です。AIと人間が互いに得意分野を担当して補い合い、成果に結びつけるのがハイブリッド営業の特徴です。
【自己診断】自社の欠点から導き出す3つの営業代行活用パターン
自社の営業活動を営業代行に依頼するためには、まずは自社の課題を明確にする必要があります。ここでは、多くの組織が直面しやすい課題ごとに、3つのパターンを紹介します。
新規事業の製品やソフトウェアの性能や機能を向上させる「市場検証型」
自社製品に対する顧客や市場の反応を収集・分析する業務を営業代行に依頼するパターンです。
製品のリニューアルや新製品に対する市場の反応が想定よりも悪い場合、顧客のニーズを正確に把握できていない可能性があります。
顧客の声の収集・分析に注力すれば、製品開発のコンセプトを固めやすくなり、より顧客のニーズに応じた製品が展開できるでしょう。顧客との対話は、商品開発における貴重な情報源になります。
営業代行を通じて自社の課題を言語化すれば、商品開発や顧客対応などの品質向上につながるでしょう。
既存事業の「量から質へ」の転換を狙う「効率化・DX推進型」
営業活動では件数が必要ですが、ただ件数だけを追うだけでは成約率は向上しません。
人手不足や労働時間の制限などでリソースが限られている場合は、AIなどのデジタル技術で業務の効率化を図ると効果的です。初動対応や過去の商談を分析すれば、業務の精度も速度も上昇して営業活動の質の向上が見込めます。
大手コンサル企業の導入事例では、初動対応や日程調整を自動化したことで、リードタイムが平均2日以上短縮され商談化率が125%まで向上したデータも報告されています。
営業活動の量と質の両方を改善したいなら、AIに詳しくハイブリッド営業が展開できる営業代行がおすすめです。
内部の仕組みや過程を「見える化」し、知見を社内に溜める「資産蓄積型」
業務が一部の担当者にしかわからない属人化が課題の場合、業務内容を可視化して自社に蓄積する方法が有効です。
担当者の業務プロセスや知見を聞き出してデータ化して社内に共有する仕組みを構築できれば、属人化の課題解決の糸口が見えてきます。
架電や商談の録音、資料作成の使用ツールや手順をデータ化して社内全体に共有してほかの社員も実践できれば、会社全体の営業成績の向上も期待できます。
自社にノウハウが資産として蓄積されれば、将来的に営業代行との契約が終了した後でも、契約中と同等の成果を発揮し続けられるでしょう。
自社に最適な種類・料金形態・支援領域の選び方
料金形態には、成果報酬型と固定報酬型があり、その2つを組み合わせることも可能です。ここでは、それぞれの料金形態の特徴と支援範囲の例を紹介します。
商談履歴や顧客とのやり取りの資産化と戦略設計を両立する「固定報酬型×一気通貫支援」
固定報酬型は、月額で一定の金額を支払う形態です。
中長期的な視点で営業代行に業務を依頼する場合や、営業戦略の立案から商談の型作りまで一気通貫で依頼したい場合は、固定報酬型になることが多い。
新規事業の立ち上げや、将来的に営業代行から離れて自社で営業活動を進める計画がある場合も、固定報酬型になるでしょう。ただし、成果が出るまでに時間がかかる点や、成果が出ない間も固定で費用がかかり続ける点には注意が必要です。
業務の範囲は営業代行会社によってさまざまですが、目安の料金相場は営業担当者1名あたり月額30万~80万円といわれています。
短期のアポイント数を低リスクで確保する「成果報酬型×ピンポイント支援」
成果報酬型は、アポイント1件ごとなど、指定した成果を達成した数に応じて報酬が発生する形態です。
初期費用を抑えてアポイントの数を伸ばしたいときや、手順が確立された商品の短期展開を行う場合は、成果報酬型で業務を依頼するとよいでしょう。
ただし、委託先の担当者が件数を増やそうと相手に強引なアプローチをして自社の信頼を損なう恐れや、自社に合わない低単価のアポイントを結んでしまう危険性があります。自社にノウハウが蓄積されない点も注意が必要です。
成果報酬型で業務を依頼する場合は、成果の定義を明確にし、自社のブランドを守れる体制かどうかを確認したうえで導入を検討しましょう。費用は成果の内容にもよりますが、商談の場合はアポイント1件あたり1万円~3万円や売上の30%~50%程度を目安に考えるとよいでしょう。
低コスト・高費用対効果を狙う「AIハイブリッド型」
AIによる自動化と専門家の判断力を組み合わせた形態です。大量の営業アプローチの非効率さを含む、社内業務の効率化を目指す企業にとって、有力な選択肢になります。
顧客データ分析や定型的な案内配信はAIが担当し、そこで得たデータを元に成約の見込みが高い相手への個別提案を人間が担当するなど、役割が分担されています。すべてを人の手に頼っていた従来のモデルと比べ、AIが得意とする分野はAIに任せつつ、質の高い商談に集中できる点が強みです。
導入時は、機械に任せる作業と人間が介入する範囲を明確にすることがポイントです。費用は契約によってさまざまで、固定報酬と成果報酬を合わせた設計になっていることもあります。一例を挙げると「固定報酬月額25万円+成約金額の5%」、「固定報酬月額8万円+成約金額の15%」などです。
会社に「負の遺産」を作らないために|営業代行の3大選定基準
営業代行の選定を誤ると、期待したような成果が出ずに費用がかさむだけでなく、会社にノウハウも残らない事態を招いてしまいます。ここでは、営業代行を選定するうえで確認すべき3つの基準を紹介します。
営業支援システムとの連携による「活動の透明性」が標準であるか
自社製品に対する顧客や市場の反応を収集・分析する業務を営業代行に依頼するパターンです。
製品のリニューアルや新製品に対する市場の反応が想定よりも悪い場合、顧客のニーズを正確に把握できていない可能性があります。
顧客の声の収集・分析に注力すれば、製品開発のコンセプトを固めやすくなり、より顧客のニーズに応じた製品が展開できるでしょう。顧客との対話は、商品開発における貴重な情報源になります。
AI活用の成否を分ける「データの質」を管理できるか
多くの営業代行は、業務を効率化するためにAIを取り入れています。正確性や処理速度の観点から、社内データの管理などは人間よりもAIの方が向いているといえるでしょう。
しかし、AIの能力を最大限に発揮させるには、基となるデータが決まった型式であることが求められます。同じ顧客のデータが重複していたり、半角と全角が混ざっている場合、データ上の管理に予期せぬエラーが生じることがあります。
営業代行を選ぶ際は、データの管理方法にも正確なルールがあるかを確認し、導入までに少しずつでも自社のデータ表記を統一していきましょう。
顧客の反応を社内知識として蓄積できるか
顧客の反応をデータ化して分析し、ほかのプログラムに連動させられるかも、大きな選定基準のひとつです。顧客の反応は貴重な情報源です。
商談の録音や映像をデータ化して整理して社内で共有し、分析結果を新製品の開発や教育プログラムの作成に反映できれば、業務全体の品質の向上が見込めます。
成功事例の共有に留まらず、失敗事例とその要因も構造化して蓄積できれば、なお良いでしょう。顧客の反応をほかのプログラムに展開して、社内全体の業務改善の適用可否が、営業代行を決めるうえで確認しておきたい基準です。
投資対効果を最大化する「90日間のロードマップ」と公的支援の活用
営業代行の導入で成果を確実にするには、計画的な工程管理と費用の削減が欠かせません。社内システムを根本から変更するAI導入支援を行う場合は、本導入前に90日(約3ヶ月程度)の試用期間を設けるのが一般的です。
ここでは、営業代行に業務を依頼して90日で成果を出すためのロードマップと、AIを活用する場合の公的な支援制度を見ていきましょう。
失敗を最小化し成果を確実にする「90日間標準ロードマップ」
90日間で業務を改善するロードマップは、以下の通りです。
| 期間 | 内容 | 具体的な業務 |
|---|---|---|
| 1〜30日目 | 業務基盤の構築と対象の明確化 | データの統合 営業対象企業の選定 発信情報の一貫した言葉の枠組みの設計など |
| 31〜60日目 | 実行と数値の計測 | 特定部署での運用開始 返答率や商談化率の測定 AIによる接触量の拡大検証など |
| 61〜90日目 | 運用の精緻化と成果の最大化 | 数値に基づく営業対象の修正 人間への商談引き継ぎ工程の整備 継続的な改善など |
最初の30日間は業務改善の地盤を整え、31日目から特定の範囲で試験運用を行い、61日目以降で効果の範囲を検証します。各期間内で調整が必要だと感じた部分を社内で共有し、内容を微調整しながら進めていくことが、営業代行を導入して成果を最大化するコツです。
実質負担を大幅軽減する「デジタル化・AI導入補助金」の活用
業務を依頼する会社がIT導入支援事業者であれば、条件を満たせば以下のような購入費用が「デジタル化・AI導入補助金」を受けられます。
- ソフトウェア購入費・クラウド利用料(生成AIツール、会計ソフト、受発注システム、顧客管理(CRM)など)
- 導入支援費用(コンサルティング費用、初期設定、操作研修、マニュアル作成、運用サポートなど)
- ハードウェア購入費(PC・タブレット、POSレジ・券売機など※インボイス枠などの特定類型で、対応ソフトとセット導入する場合のみ対象)
目的や金額の上限などは、以下の通りです。なお、本表は2026年度の公募要領です。
| 申請枠 | 主な目的・対象 | 補助額上限 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 通常枠 | 業務プロセスの効率化、AI導入、DX推進 | 上限450万円 下限5万円 | 1/2(賃上げ要件達成で2/3に引き上げ) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | インボイス制度対応の会計・受発注・決済ソフト、PC・周辺機器 | 会計・受発注・決済ソフト上限350万円 PC周辺機器上限10万円 | 2/3(一部要件で3/4) |
| 電子決済枠 | インボイス対応のPOSレジ・券売機 | 上限20万円 | 2/3 |
| セキュリティ対策推進枠 | サイバー攻撃対策サービスの導入(お助け隊サービス等) | 上限150万円 下限5万円 | 1/2(小規模事業者は2/3) |
| 複数者連携枠 | 商店街やサプライチェーン等、複数事業者での連携導入 | グループで上限3,000万円 下限100万円 | 2/3〜3/4等 |
引用元:中小企業デジタル化・AI導入支援事業 https://it-shien.smrj.go.jp/about/
補助金を活用できれば、社内の決裁も通りやすくなるでしょう。ただし、補助金の対象になるためには、登録されたITツールや支援事業者でなければならないなど、いくつか条件があります。
自社の欠点を売上の資産に変える第一歩を
営業代行とは、企業の営業活動を外部に委託することで、自社での営業新人の育成にかかるリスクに対抗するひとつの選択肢です。営業の業務を委託するときは、料金だけでなく自社に課題や目的に応じた会社と業務支援範囲を選ぶことが判断の基準になります。
AI関連の支援であれば、国から補助金が受けられる可能性もあります。まずは自社の課題と目的を明確にしてから、本当に営業を委託するのが適切なのか検討しましょう。

